親が死んでも食休み=食後の一睡万病丹
“万病丹”とは、どんな病気にも効くという意味です。
確かに、食後にちょっと休んだからといって、病気が治るというのではありませんが、それほど身体にいいという意味です。
“親が死んでも”というぐらいですから、食後をゆっくり休むことは、よほど体にいいいと考えたのでしょう。
この食休みは、現代医学の考え方としても、おおいに勧められることです。
食べ物が胃に入ると、消化吸収のために、胃に流れ込む血液の量が多くなります。
(食後に眠くなるのは、胃に流入する血液量が増えたことにより、頭に行く血液量が少々減って、血流が鈍くなるからです。)
さらに、肝臓などのほかの内臓も活発に動き始めます。
ところが、食後にすぐ運動したり仕事をしたりして頭を使ったりすると、消化吸収のために流れるはずの血液量が少なくなり、
消化作用がうまくいかなくなるのです。
実際に、食休みの習慣がある国は多く、中国・インド・ベトナムなどの熱帯・亜熱帯地域や地中海性気候である地中海沿岸のギリシャ・イタリア・中東・北アフリカでも一般的に見られる。
有名な所でスペインの『シエスタ』という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
食べてすぐ寝ると牛になる
食後横になるとしたら、右側を下にして(胃から腸への出口の幽門が右側にある為)30分ほど横になるのはとてもいいことです。
横にならずとも、静かにくつろぐのが理想的です。
食事のすぐあとに、食休みとしてゲームなどをするという方がいるかもしれませんが、医学的には(あくまで身体の事を考えたらですが)あまり好ましくはありません。
また、主婦の方は、食事の後片づけは少し時間をおき、一休みしてから行いましょう。
お釈迦さまが、右側を下にしてくつろいでいる姿を見たことがあると思いますが、
ある時、知り合いの和尚に『お釈迦様は胃腸が弱かったんだ』ということを聞いたことがあります。
真偽の程はわかりませんが…。
さて、ことわざの「食べてすぐ寝ると牛になる」ですが、これはあくまで行儀作法の問題です。
これにしても、身を粉にして一家中で働いていることこそ美徳とされた時代、またそうしなければ生活が成り立たなかった時代に生まれたことわざです。
現代社会とは、あまり結びつかない言葉ですね。
それよりも健康のため、牛になるぐらいゆっくりと食後を過ごせるくらいのゆとりが欲しいですね。
胃腸のツボ『足の三里』
膝の下、向こうずねの外側にあるツボで、正確には脛骨前面を下からなで上げていって止まった部分と、腓骨頭の下一寸にある陽陵泉の中間点。
簡単にいうと、膝の下の外側、すねの骨に沿って下からこすり上げ指が止まるとこのちょっと下。
こんなところでしょうか。
実際このツボとても有名でして、知っている方も多いとは思いますが、松尾芭蕉が『奥の細道』の冒頭で、
『股引の破れをつくろい、笠の緒をつけかえ、三里に灸をすえて』旅支度を整える、という一節がある。
昔は「足の三里に灸をしない人と一緒に旅行するな」というようなことすら言われていたようである。
他にも『三里歩くたびに、足の三里に灸を据えた』などたびたび書かれています。
ではなぜ、足の三里なのでしょう。
『足の三里』
胃腸の働きを調整する作用
消化器疾患にも有効
疲労回復
と、ツボとしての効能はとてもすごいものがあります。
だからこそ芭蕉の時代、生水を飲むかもしれないから胃腸の手助けをするため三里に灸を、
歩いて疲れたから三里に灸を、三里に灸をすることも知らない素人と一緒に旅をしたら、
どんなトラブルに巻き込まれるかわからないから灸をしない人とは旅をするなと、旅の心得として芭蕉も書いたのでしょう。
ちなみに指圧をするとしたら、
- 親指で、足先にジーンと刺激が伝わるくらいに強めに刺激するとよい
- げんこつで、とんとん叩くのも良い